日本最古の墨製造「古梅園」訪問The oldest Sumi maker in Nara

Spirit of Sumi ink- Kobaien / English follows:

墨工房 墨が生まれるところ

日本最古の墨工房といわれる奈良の古梅園の墨製造所に伺い、制作過程の見学と、にぎり墨の体験をしてきました。

一言、素晴らしかった!!

実際に見に行かなければわからないような、蝋燭を燃やし、煤を集める採煙の部屋は、温かな蝋燭の灯で満たされた不思議な空間でした。

墨は土から生まれた植物を燃やした火から生まれ、水と膠で練られ、そして風により乾燥され、水の力を得て紙の上に現れる、地水火風のすべての元素を持つものなんだということがわかった、とコールが帰りの道で話していたことが印象的でした。

固形墨は、煤と膠と香料だけのシンプルな素材で作られるからこそ、ひとつひとつの作業の質や技が求められ、そしてたくさんの人の手によって、作り上げられるものであるということ。

手や足、全身を使い練りあげる墨職人さんの真っ黒な手から受け取った墨は、とても暖かく、握れば、もうその形に。その暖かさがとても印象的で。人の手の暖かさ、膠の暖かさ。

そしてそれがあの、ぶつかったときに乾いた音が出るまでになる、その長いプロセス。水はゆっくりと抜かれなければ、割れてしまう。

そのあとに、段階的に湿度を調整した灰にいれてゆき、だんだんと水を抜き、そして後は自然乾燥で、ゆっくりと水がぬけて、仕上がりに近づいていく。

全身の体重をかけて練り、そして目を見張る速さで型にいれたり成形したりするのが印象的だと職人さんに伝えたら、

「膠がすぐ固まってしまうんですよ。」と触らせてくれた、成形前練りをする前の墨は、少し硬くなっていて、少し冷たかった。私達が手に握ったのは、練って、練って、練られた墨を手渡ししてくれた。あの温かさが心に残る。

練って練られた墨、そして温かさを保つたゆまぬ作業により温かく柔らかさを持つ膠。

だんだんと段階的に水分を抜いていく墨は、その過程で擦って作られる墨もまた、全く異なるものなのでしょう。

膠や煤の種類で、まったく異なる墨ができ、そして置かれた年月によっても、また墨は異なります。もちろん、描かれる紙によっても、まったく異なる表情をみせる墨。

製造のプロセスは、

1. 採煙:蝋燭煤の採集

2. 膠溶解:膠は、獣類の骨・皮・腱などを水で煮た液を乾かし、固めた物質

3. 煤と膠、香料の配合

4. 型入れ

5. 灰感想

6. 自然乾燥:藁で編んで天井から吊るし、1ヶ月〜6ヶ月乾燥

7. 磨き:表面を綺麗にして蛤の貝殻で磨いて艶を出す

8. 彩色:顔料を用いて彩色

こんなに手間暇かけて造った墨の製造が盛んだった江戸時代、古梅園が創業した室町時代。その時代に、パソコンやデータもなく、和紙に墨で描くことで、記録を残し、様々な智慧を後世に残そうとした人々の工夫の歴史なのでしょうか、、、

墨を擦って描くということが少なくなった今だからこそ、改めてその悠久の時を感じる豊かな行為だと思います。墨を擦るとき、心が落ち着く、小さい頃お習字で墨を擦るという行為と、その時間がとても好きだったことを思いだします。

墨は、焦ってがしがし擦れば、荒い粒子がでて、墨の乱れがはっきりとでますし、ゆっくり落ち着いて擦れば、均等な墨が生まれ、描き心地も全く違う、不思議なもの。

店頭から真っ直ぐに奥に続く、墨を運ぶトロッコのレール沿いに歩いて様々な工程作業家屋の入り口には必ず紙垂(しで)があり、そのすっとした佇まいが印象的でした。その意味を聞いたら、悪いものを寄せ付けないようにーということでした。

墨作りは元はお寺や神社で蝋燭を燃やした煤を集めたものから始まったという由来からも、やはり神社仏閣との繋がり、神事との繋がりがあるような、そんな凛とした空気を感じました。酒造りもですが、古来からある日本の産業や物づくりは、祭事や神事から派生したものが多くありますね。

深淵な墨の世界、水面と水中を行ったり来たりしたながら、いろんな側面から楽しみたいし、見つけた美しさをお裾分けしてゆけたらと思います。数ヶ月前から始めた墨教室も、私達自身も学びながら、より良いものを提供して行けたら、と思っています。

古梅園

http://kobaien.jp/

Last week, we visited Nara to visit Kobaien, the oldest Sumi maker in Japan. It was amazing and beautiful to see all the steps they take to make ink sticks.

Sumi ink is made from soot! Yes, soot. They burn vegetable oils to collect soot. And sometimes they burn pine resin and branches.

Collecting soot is a very sensitive process- they have to turn the cover over the top of the candle every 30 minutes so that they can collect evenly sized soot pigment. The pigment sizes determine the quality of the Sumi ink. They are very careful to change the oil and candlestick...

After that, they knead soot and nikawa really well and make a form.

The process is:

1. Collect soot from burning candles

2. Melt Nikawa, animal hide glue

3. Mix soot and nikawa by hand and foot

4. Put into a mold

5. Dry in ash

6. Dry in the air for a few months

7. Polish Sumi ink with shell

8. Decorate the Sumi ink

We saw the process and also had an opportunity to hand squeeze a Sumi ink stick into its final form. The ink stick was originally made by an artisan to check the condition of Sumi, such as density, moisture, and elasticity.

The just made Sumi was very warm and soft. It takes a long time to dry and it shouldn't be dried too quickly, otherwise, it will crack.

Wow, that was such an amazing process. It makes sense why these Sumi ink sticks are expensive... So many people’s hands are involved to make them. These sumi sticks create beautiful gradation in Sumi painting.

Kobaien

http://kobaien.jp/